こんな日は、桜並木があって本当に良かったって思う。
強い日差しから、ぼくらを守ってくれる。

桜の木の根元には、丸い穴がいっぱい開いている。
おやかたに聞いたら、これは夜セミの出てきた穴なんだって。
毎晩毎晩、その穴は増えていき、桜の葉っぱの裏はセミの抜けガラでいっぱいになってしまった。

「本当に夏はイヤだなあ。オレは季節ってのが、春、秋、冬のくり返しだったらいいと思うぜ。」
「でも、桜並木やセミがあんなに元気なんだもの。夏だって必要だよ。」
ぼくが反対すると、
「そうだな。」
と、おやかたはしかたなさそうにポツリと言った。



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