ぼくのカゼが治っても、まだまだ寒い日は続いた。
午後になると、毎日風が吹いた。
遠くの白い山から吹きおろす風が、桜並木の細かい枝の間をピュウピュウすり抜けた。

ぼくはだんだん心配になってきた。
おやかたは、木は寒いから無理しないで待ってるんだって言ってたけど、
ひょっとしてもう枯れているんじゃないのかな。
だって、いつまで待っても芽が出ないんだもの。いくらなんでも長すぎるよ。

おやかたにそう言うと、いつもの調子で言われてしまった。

「ばーか。枯れてるもんか。
 木はオレたちより、ずっとかしこいんだ。」



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