それから春が過ぎ、夏が来て、また秋が来た。

ぼくは前よりずっと大きくなった。
大きさだけなら、もうおやかたとほとんど変わらないみたい。

「ねえ、おやかた。同じ季節をくり返すと、ぼくらは大きくなるんだね。」
「いや、年をとるのさ。」
「同じ季節をくり返して、そしてどうするの?」
「どうもしないさ。
 春は桜が咲いて、夏はやってられないってくらい暑くって、
 秋はいろんな色の葉が落ちて、冬はしみいるように寒くって、
 オレもおまえも桜並木も、みんな一緒に年をとる。
 それでいいのさ。」
「なーんだ。簡単だね。」

桜並木はまた、葉を落としはじめている。
そのうちきっと冬がやってくる。
でも、今度はもう、ぼくは心配しない。
桜並木の一年間を、ぼくはもう知っているのだから。


(終)
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