12月になる頃には、葉っぱは一枚残らず落ちてしまった。
桜並木は丸裸だ。
葉っぱがないぶん、枝がどんなふうになっているのか良く見える。
「さみしいね。」
ぼくが言うと、
「これが木の基本の姿だよ。」
と、おやかたは言った。
「きほんって?」
「かざりのない、そのままの姿ってことさ。冬ってのは、生き物を裸にするのさ。」
「えー!?なんで?
冬は寒いから、ぼくたち冬毛になって毛がふえるじゃない。
人間だっていろいろ毛皮を着込んでいるよ。
裸になるのは夏のほうだよ。」
「ばーか。裸になるってのは、見た目だけじゃねえんだよ。
ま、おまえみたいな子供にはまだ分からんだろうさ。」
「なんだよー。」
ぼくはわけが分からなかった。
前へ TOPへ 次へ